ヒトパピローマウィルスとは

ヒトパピローマウィルスは癌に発展することも

ヒトパピローマウィルスとは簡単にいうと「イボを作るウィルス」ということです。別名でヒト乳頭腫ウィルス、略してHPVと呼ばれることもあります。ヒトパピローマウィルスには100通りほどの種類があり、その中の30~40種類が性器に感染できる、すなわち性感染症を引き起こす可能性があるウィルスとされています。性感染症になり得るヒトパピローマウィルスには良性と悪性があり、外陰部などにコブを作るのが良性、子宮ガンなどに発展する可能性のあるものが悪性です。
ヒトパピローマウィルスは非常に感染しやすいウィルスで、特に女性では一生涯のうちに約8割が感染する可能性があるとも言われています。しかしその反面、ヒトパピローマウィルスは感染してもはっきり発症することはほとんどありません。
ヒトパピローマウィルスのほとんどは良性で、良性のウィルスはほうっておいても自然に消えてしまうことが多いからです。そして悪性のヒトパピローマウィルスもすべてがガンになるわけではなく、ガンに発展するものは多くて1割程度です。しかし、ガンになるタイプのヒトパピローマウィルスの潜伏期間は10年におよぶこともあり、感染に気づかないまま忘れたころに発症してしまうこともあります。このようにヒトパピローマウィルスは感染したウィルスの種類によってリスクに温度差があるのです。

ヒトパピローマウィルスの症状

尖圭コンジローマという尖った小さなイボができます

良性のヒトパピローマウィルスに感染した場合は尖圭コンジローマという尖った小さなイボができる病気となって症状に現れる可能性があります。イボは性器や肛門付近を中心にたくさんできることもあればひとつだけの場合もあり、女性では膣内に広がることもあります。この尖圭コンジローマはヒトパピローマウィルスに感染してから平均で3ヶ月、長いときには8ヶ月ほどの潜伏期間を経て発症します。また、イボと同時に多少のかゆみや違和感を感じることもありますが痛みはなく軽い症状ですんでしまうことが多いようです。ガンに発展することはありません。
一方、悪性のヒトパピローマウィルスに感染してしまった場合は、異型細胞(前ガン状態)や子宮頚ガンとなって症状に現れる可能性があります。無自覚のまま何年も悪性のヒトパピローマウィルスに感染した状態が続き、ついにはガンが出来てしまうのです。ヒトパピローマウィルスは細胞の形を正常でないものに変えてしまうウィルスです。そのため弱い型であればイボとして、強い型であればガン細胞として現れるというわけです。
ヒトパピローマウィルスは悪性・良性にかかわらず自覚症状としてでてくることは少なく、ほとんどの場合でなんの症状もなく消滅してしまいます。ヒトパピローマウィルスは弱いウィルスなのです。

ヒトパピローマウィルスの感染原因

ヒトパピローマウィルスは潜伏期間が長いのが特徴

ヒトパピローマウィルスのおもな感染原因は性行為によるものです。ヒトパピローマウィルスは非常に感染しやすく、体液や尿を媒体として皮膚や粘膜にできたわずかな傷から侵入します。そういった意味ではヒトパピローマウィルスは傷がある場所、粘膜のあるところならどこからでも感染してしまう可能性を持っているということになります。感染しやすい性行為時はのどや肛門からの感染にも気をつけなければいけません。
また、多くはありませんが新生児からヒトパピローマウィルスが見つかることもあります。これは、母親がヒトパピローマウィルスに感染しており、出産時に産道から母子感染してしまったためです。赤ちゃんは、このような粘膜に感染するタイプのウィルスに産道感染すると目に感染してしまうこともあるので危険です。
ヒトパピローマウィルス自体は決して強いつくりではなくて、こういった狭い範囲での直接感染以外での感染はまずないといってもよいでしょう。性行為とヒトパピローマウィルスについて正しい知識を持つだけで、かなりの感染原因をなくすことができます。一方で、ヒトパピローマウィルスは潜伏期間が長く、症状に出ないことも多いため、意識せず感染を広げてしまうおそれがあるのも事実です。自分が感染原因にならないためにも、心当たりがあれば検査をおすすめします。

ヒトパピローマウィルスの検査

明らかに症状が出ている人は病院で検査しましょう

ヒトパピローマウィルスだけを調べる検査方法はこれといってはっきりとは確立されていません。特に男性の検査は難しく、尖圭コンジローマを発症していなければ男性からヒトパピローマウィルスを捕まえることはまずできません。これはヒトパピローマウィルスが他のウィルスと違い皮膚や粘膜の浅いところに感染するため、体の免疫細胞がウィルスだと認識しにくいためです。
女性の場合は子宮ガンや子宮頚ガンの検査を受けると、オプションのような形でヒトパピローマウィルスの検査がついてきます。ヒトパピローマウィルスはとくに子宮頚ガンの発症に大きく関係しているためです。ただ、ヒトパピローマウィルスの検査は保険が効かないので費用はあらかじめ確認しておきましょう。
検査方法は、膣や子宮頚管などの粘膜を採取し、その中にヒトパピローマウィルスがいるかどうかを調べます。男性で尖圭コンジローマができている場合はコンジローマのひとつを切り取り、同じように調べます。これはDNA法と呼ばれ、今のところ一番効果的なヒトパピローマウィルスの検査方法です。
もし陽性でヒトパピローマウィルスが発見されても、良性か悪性かの型を判別できないこともあります。また、一度検査で見つかってもそのまま発症しなければ次の検査ではなくなっている可能性もあります。検査は女性は産婦人科、男性は泌尿器科でやってもらえます。

ヒトパピローマウィルスの治療

ガン細胞になる前であれば治療可能です

ヒトパピローマウィルスそのものを完璧になくす治療法は残念ながら今のところ見つかっておらず、体から自然消滅してくれるのを待つしかありません。抗生剤を使えばある程度は活動を抑えられますが、これの効果も100パーセントではないようです。このように人為的に消滅させることができないので、ヒトパピローマウィルスがもとで発症する病気は、良性・悪性とも再発しやすいのが特徴です。
良性ヒトパピローマウィルスによる性病は、尖圭コンジローマが代表的です。尖圭コンジローマは切除やレーザーなどの手術でイボを取り除いたり、抗ガン剤を塗ったりして治療していきます。抗ガン剤を使うのはコンジローマの原因であるヒトパピローマウィルスの薬が存在しないため、これを代用するのです。およそ25パーセントの確率で再発してしまいますが、繰り返し治療を受けていれば完治することができます。
ガンに発展する可能性のある悪性のヒトパピローマウィルスですが、ガン細胞になる前であれば、十分に活動を抑えることができます。前ガン状態になっているヒトパピローマウィルスでも、治療を続けるうちに消滅してしまうこともあります。ヒトパピローマウィルスははっきりした治療法はないものの弱いウィルスであるため、悪性でも治る可能性が高いのです。ちなみに男性は悪性のヒトパピローマウィルスでも尖圭コンジローマとなって発症するので治療法は同じです。

ヒトパピローマウィルスの予防

定期的な子宮ガン・子宮頚ガンの検査を

ヒトパピローマウィルスは感染予防と発症予防、ふたつの予防ができます。まずヒトパピローマウィルスに感染しないための予防は、性行為時にコンドームを着用することです。コンドームを着けるだけでほぼ確実にヒトパピローマウィルスの感染は防ぐことができます。
疲れやストレスがたまっているときは体の抵抗力が落ち、ウィルスに感染しやすい状態になっているのでそういう状態での性行為も避けたほうが無難でしょう。複数の相手とむやみに性行為をしないなど、性について真剣に考えることも大切です。
ヒトパピローマウィルスによる子宮頚ガンを発症するのは20代後半の女性に多く、これは10代でヒトパピローマウィルスに感染している割合が高いということになります。中にはヒトパピローマウィルスをわかっていなかったケースも多く、早いうちから性病に関してそれなりの知識を持っておくことがそのまま予防へとつながります。
ヒトパピローマウィルスの「発症」を予防するといった意味では、定期的な子宮ガン・子宮頚ガンの検査を受けることが効果的です。10代で性行為経験がある場合は、20歳くらいから検査を受けるようにするとより安心できるでしょう。とにかく早くヒトパピローマウィルスの感染に気づくことが、発症予防の第一歩なのです。